時効ってよく刑事ドラマとかでみるやつですよね?
刑事ドラマなどである”犯人の時効成立”などは刑法上の時効のことです
今回は意外と身近な民法上の時効:取得時効について分かりやすく解説します!
民法上の取得時効・・?
長い間暮らしてきたから「このくじらおくんの土地はもうボクのものだ!」とかだよ
これを取得時効っていうんだ
な・・なんてこと!
誰かのものを自分のものにするためには、いくつか必要な要件があるんだ
それを今回は解説するよ!
要件を満たしていないと自分のものにできないってこと?
そういうこと!
それでは頭んなかくんと取得時効について例を用いて分かりやすく解説しますヨー
そもそも時効ってなに?
時効とは時間の経過によって法的に何らかの効果が生じるものです。
例えば他人のものを自分のものとして一定の期間持ち続ければ時効によってそのものを所有する権利が得られます。
それってほんとうの持ち主がかわいそう・・
そうですね
本当の持ち主からすれば納得できないことです
でも一方でこの法律がなければ困ったことも起こりうるんです
頭んなかくんそうですよね?
そうなんだよ
突然だけどくじらおくんが今住んでいる土地は”くじらおくんのもの”なの?
もちろん”ぼくのもの”だよ!
ちゃんと証明する登記だってあるよ!
その土地は元々誰のもの?
おじいちゃんから貰ったよ
ちゃんと証明できるよ
先祖代々から受け継いでいるからね!
じゃあそれってどこまで証明できる?
その先祖代々の以前は?
さらにその昔はどう?
そんなの分からないよー
元を辿れば地球のものなんじゃ・・
えっでも地球は宇宙からできたし・・もしや宇宙のもの?
でも宇宙って”無”からできたっていうし・・ブツブツ・・
ふふっ
迷宮入りしてますヨ
こんな風に無制限に遡るともはや本当にくじらおくんの土地なのか分からないですね
だから他人のものでも一定の期間持ち続ければ自分のものにできるという法律があるんです
“自分のものが他人のものにされる”時効という法制度は道徳的にみれば納得できないかもしれません。
しかし、長い年月が経過すればするほど「これは自分のものだ」などの事実を証明することは難しくなってしまいます。
無制限に年月を遡り争っていてはそれは膨大な量となり、裁判所も大変なことになってしまいます。
つまり時効とは、長く年月が経過すると権利関係を証明することが難しくなるから法的に時間制限のルールを作って制限しちゃいましょうという道徳的にはあまり納得いかないような制度なのです。
なんだかモヤモヤするな~・・
法は人間がつくり出したものだから穴もあるってところです!
続いて時効の種類についてみてみよう!
時効の種類
時効には大きく分けると2種類あります。
1つ目は、ある一定の時間が経過すると何らかの権利を取得することができる取得時効というものです。
2つ目は、取得時効とは逆にある一定期間経過することで、何らかの権利が消滅してまう消滅時効といわれるものです。
時効を有効にするためには、いくつかの要件を満たし権利関係を証明しなければなりません。
きちんと要件を満たさないと「時効です!」っていえないんですねー
そうですヨ
それぞれ異なるルール:要件についてみていきましょう!
取得時効とは?
1項 20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有したものは、所有権を取得する。
例えば・・AさんとBさんがお隣同士の場合
AさんがBさんの土地だと知っているのに境界線を越えてBさんの土地に入って畑を作ってその後も野菜を作り続けたとします。
Bさんが何の主張もしないで20年間経つとこの土地はAさんのものになります。
取得時効は、5つの要件を満たす必要があります。
- 20年間
- 所有の意思を持っていること
- 平穏
- 公然
- 他人の物を占有
それでは具体的に例をみていきましょう。
他人の土地を取得編
しろくじ長の土地だけど
畑作って耕しちゃおうー!
・・しろくじ長、何も文句を言わず20年以上経過・・
わぁ!
今年も豊作だなー!
くじらおくんやー
ここはわしの土地ぞよ~!
もう20年以上経ったからぼくのものだよー!
な・・なんとー!
{頭んなかくん解説}
くじらおくんは20年間、平穏、公然と所有の意思を持って土地を所有。
この土地はしろくじ長のもの。
“他人の物を占有”の要件も満たしています。
結果、くじらおくんはこの土地の所有権を時効により取得できます。
“所有の意思を持って“・・とは?
{頭んなかくん解説}
“所有の意思を持って”とは「これはぼくのものだ!」など本人の個人的な意思により決まるのではなく、その権利自体に本来から備わっている特徴によって決まります。
たとえば・・
マンションを賃貸する場合、賃借権によってマンションを借ります。
賃借権は本来、“借りる”という所有の意思がない特徴をもつため、20年経ったとしても自分のものにはなりません。
泥棒の場合はどうなるのじゃ?
{頭んなかくん解説}
泥棒は“所有の意思をもって”いるのでしょうか。
ここでポイントとなるのが占有権という権利。
占有権とはそのものを事実上支配できる状態にある権利のことです。
泥棒は原因はともあれ、事実上盗んだものを支配しているため占有権があります。
泥棒は”誰かのために占有する”わけではないですよね。
この泥棒がもつ占有は“自分のもの”として所有する特徴をもっているということになります。
・・ということで泥棒は“所有の意思を持って”いることになります。
平穏、公然とはどういうことじゃ~?
{頭んなかくん解説}
平穏は、くじらおくんが無理やり奪っていないこと。
公然は、隠して周りに知られないようにしていないこと。
・・等ということです!
その手段が暴行・強迫などの違法行為によってされた場合は時効取得できません。
ぼくがこの畑を耕していることみんな知ってるよー
無理やり奪ってないし・・
ぐぬぬ・・確かにそうじゃ~
{頭んなかくん解説}
ちなみに先ほど泥棒でも取得時効の要件の一つである”所有の意思を持って”は満たしていると話しました。
たとえば、スリが観光地で他人のポケットからスマートフォンを盗み、取得時効の要件を満たして20年間占有を続けると所有権を取得できるということになります。
しかし泥棒は罪に問われるはずじゃ
{頭んなかくん解説}
もちろん泥棒は犯罪ですよね。
スリは窃盗罪、忘れ物を盗んだ場合は占有物離脱横領罪です。
泥棒は、民法上の取得時効だけでなく刑法上の時効もあてはまることになります。
窃盗罪ならば窃盗罪の公訴時効といわれる時効です。
窃盗罪の時効は「犯罪行為が終わったときから」7年。
仮に7年間逮捕されず公訴時効が成立して、20年間取得時効の条件を満たして占有したとします。
この場合、取得時効にて盗品の所有権を得られる可能性はあります。
しかし、泥棒は“所有の意思を持って”占有したとはされず否定される場合もあります。
このように20年間、平穏、公然、所有の意思をもって占有すると、他人の土地を取得します。長期取得時効といいます。
たとえ裁判になったとしても、くじらおくんはこの要件を満たしているのでしろくじ長に勝つ可能性があります。
くじらおくんが最初からしろくじ長のものと知っていてもです。
しろくじ長の土地だと知らなかった場合はどうなるの?
知らなかった場合は期間が10年間となるんだ
売買の例でみてみよう!
他人のものだと知らなかった場合は、期間が20年間ではなく10年間で所有権を取得します。
2項 10年間所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有開始の時に、善意であり、かつ過失がなかったときはその所有権を取得する。
- 10年間
- 所有の意思を持っていること
- 平穏
- 公然
- 他人の物を占有
- 善意(=知らなかった)かつ過失なし
購入した土地が実は他人の土地だった編
おじじさん(祖父)が土地を買ったんだー
ぼくの大好きな甘藻を育ててくれるんだって!
おじじさまは優しいのぉ
・・・何の問題もなく10年以上経過・・・
しろくじ長ー
大変です!
実はおじじさんの土地の一部が他人のものだったみたい!
おじじさんは全く知らなかったみたい・・
な・・なんとな!
おじじさんは登記はどうなっているのじゃ?
{頭んなかくん解説}
登記とはその土地などを持っているひとが誰なのかをハッキリさせるためのものです。
大抵、土地を購入したときはその土地の名義変更の登記をします。
ところが、登記は義務ではないため土地を購入したのに登記の名義は変更していないというケースもあります。
おじじ変更してなかったみたいなんだよね・・
じゃが、おじじさまは10年以上も問題なくその土地を使ってきたぞな
これは・・まさしく取得時効になるはずじゃっ
{頭んなかくん解説}
おじじさまは他人の土地が一部あるとは知らなかったことに過失がなく“所有の意思を持って平穏公然”に10年間占有。
その結果、おじじさま時効取得によって他人の土地を時効取得できる可能性があります。
知らなかったことに過失がないって?
{頭んなかくん解説}
10年間の短期取得時効は“知らなかったことに過失がない”という要件がポイントです!
ここでいう”過失”は相当の注意すれば分かったのに他人のものであること発見できなかったなどの“注意不足はなかったか”が問われます。
注意不足かぁ
登記を確認してなかったとかかなー
{頭んなかくん解説}
くじらおくん、いいところをついております!
過去に“過失あり”とされた例では、「登記簿を調べていない」、「売主が図面で境界を説明したのに買主がみていなかった」などが挙げられます。
くじらおくんのおじじさまが登記を確認していたのかなどの“知らなかったことに過失はなかったか”が取得時効と認められるのかに関わってきますね
そうなのかー
さっそくおじじさんに確認してみるよ!
このように他人の土地と知らずかつ過失なく、10年間、平穏、公然、所有の意思をもって占有すると、他人の土地を取得します。
短期取得時効といいます。
取得時効により所有権を取得するには単に要件が満たされただけでは足りません。
その当事者や直接利益を受ける者が時効が完成したことを主張する必要があります。
これを“時効の援用”といいます。
まとめ
いかがだったでしょうか
今回は取得時効について解説しました
最後にもう一度内容を確認してみましょう!
{くじらおくんメモ}
ここまで読んでくれてありがとう!
おじじさんの例であったぼくの大好きな”甘藻”はぼくら『くじらもどき族』はよく食べるんだー
ジュゴンの主食なんだね
ちなみにぼくの大好物は”オキアミチップス”だよー
まだまだ頑張ってお勉強するから良かったらお付き合い下さい~