マッコ先生!
民法(相続法)が1980年(昭和55年)に改正されて以来およそ40年ぶりに大きく見直されたみたいですね!
そうですね
今回の民法改正の目玉ともいえるのが「配偶者居住権」や「配偶者短期居住権」など、配偶者の保護を目的とする新たな制度の創設ですヨ
ご主人や奥様の死亡により残された配偶者が無償で自宅不動産に住み続けられることができるように、これらの権利が法律に明記されました。
遺産分割の中でも特にトラブルが起こりやすいのが不動産です。現金や預金と異なり分けることが難しく処分に悩みます。
また配偶者が存命の場合は配偶者が相続するケースが多く、相続財産に占める不動産の割合が高いと現金や預金などのその他の財産を相続できなくなり、配偶者のその後の生活資金の確保が難しくなる恐れがあります。
そのため配偶者の保護を目的とした制度が創設され、残された配偶者は無償で自宅に住み続けられる権利を相続できるようになりました。
そのほか生前贈与や遺贈によって自宅を取得していれば、自宅が相続分の計算から除外され、自宅以外の財産も多く取得することができます。
配偶者居住権
配偶者居住権とは
それでは、今回新たに創設された民法1028条をみていきましょう!
①被相続人の配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物の全部について無償で使用及び収益をする権利を取得する。ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合であっては、この限りでない。
一 遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき
二 配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき。
②居住建物が配偶者の財産に属することとなった場合であっても、他の者がその共有持分を有するときは、配偶者居住権は、消滅しない。
③第九百三条第四項〈特別受益者の相続分〉の規定は配偶者居住権の遺贈について準用する。
む・・難しいような・・
そして長し・・
大丈夫ですヨ
分かりやすく解説していきます
まずは配偶者居住権とはどういう権利なのかみていきましょう!
この権利は、相続人である配偶者が被相続人(亡くなった方)の所有していた居住建物を相続しない場合でも、配偶者が当該居住建物に相続開始時に居住していたこと、つまり被相続人が亡くなったときに配偶者がその居住建物に住んでいたことを条件として、
遺産分割によって配偶者居住権を取得したとき
または
遺言によって配偶者居住権を取得したときには、
その居住していた建物の全部について無償で使用及び収益する権利を得ることができるということです。
そのほかに・・
共同相続人間の合意がなくても
家庭裁判所が配偶者居住権を取得させることができる場合があります!
①配偶者が家庭裁判所に対して配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出たとき
②居住用建物の所有者の受ける不利益の程度を考慮してもなお配偶者の生活を維持するために必要があると認めるとき
この場合は、共同相続人の合意がなくても取得できるということですね!

配偶者居住権の存続期間
この配偶者居住権は原則として配偶者がお亡くなりになるまで存続します。
もちろん遺言や相続人全員による同意で期限を決めることも可能です。
権利を取得した後はどうなるの?
居住建物の管理
次に配偶者が権利を取得した後の話です
配偶者が配偶者居住権を取得した後は、
善良な管理者の注意をもって、居住建物の使用及び収益をしなければなりません。
マッコ先生、善良な管理者の注意をもって・・とは?
たとえば・・・
アパート等を借りた人と同じ注意義務です。
部屋を使用するときは自分の持ち物のように雑に扱ってはならない、借りている以上は慎重に注意を払って使ってくださいということです。
ちなみに)
これに違反した場合や無断で増改築をした場合、承諾を得ずに他人に使用及び収益させた場合には居住建物の所有者が相当の期間を定めて配偶者に催告します。
そして、その期間内に是正がされないときは意思表示によって配偶者居住権を消滅させることができます。
その他の決まりごと
そのほか様々な決まりごとがあります
- 配偶者居住権の登記について この配偶者居住権は登記することもできます。
居住建物の所有者は、配偶者居住権を取得した配偶者に対して、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負います。
逆にいうと配偶者は所有者に対して登記をするように請求することができるということです。
この登記さえしていれば、たとえ居住建物が第三者に売られたとしても、その配偶者居住権を第三者に対抗することができます。
- 建物の修繕について 本来賃貸契約の場合、所有者である大家さんが修繕義務を負います。
しかし、配偶者居住権の場合は配偶者が家賃を負担しないこともあって、配偶者自身が修繕義務を負います。
- 配偶者居住権の売却について 配偶者居住権を譲渡したり売却したりすることはできません。
あくまでも権利を取得した配偶者だけの権利です。
注意すること!
たとえば配偶者が配偶者居住権を取得して、その子どもが居住建物を相続した場合。
居住建物に居住していた配偶者が、老人ホームなどに入所したとします。
その居住建物が空き家状態になったとしても、配偶者が死亡するまでは配偶者居住権が存続するため相続人である所有者は当該建物を売却することも、誰かに貸すことも困難となります。
それぞれの家庭により事情は異なりますよね・・
新たなトラブルを生まないためにも、将来を見据えたうえで、しっかりと検討して選択する必要があります!
親子関係が円満であれば、わざわざ配偶者居住権を選択する必要はないのかもしれません。
ただし、後妻など実子と血縁関係のない場合の相続や親子関係が不仲な場合では、配偶者の権利を保護するため又は、トラブルを避けるためにも、配偶者居住権を選択する必要性が出てくるのではないでしょうか。
配偶者短期居住権
続いて、配偶者短期居住権についてくわしくみてみましょう!
①配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始時の時に無償で居住していた場合には、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める日までの間、その居住していた建物の所有権を相続又は遺贈により取得した者に対し、居住建物について無償で使用する権利を有する。ただし、配偶者が相続開始時において居住建物に係る配偶者居住権を取得したとき、又は第八百九一条の規定に該当し若しくは廃除によってその相続権を失ったときは、この限りではない。
一 居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合:遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日又は相続開始の日から六箇月を経過する日のいずれか遅い日
二 前号に掲げる場合以外の場合:第3項の申入れの日から六箇月を経過する日
②前項本文の場合において、居住建物取得者は、第三者に対する居住建物の譲渡その他の方法により配偶者の居住建物の使用を妨げてはならない。
③居住建物取得者は、第一項第一号に掲げる場合を除くほか、いつでも配偶者短期居住権の消滅の申入れをすることができる。
短期ってことは、期間が決まっているってことですよね?
そういうことです
では、「配偶者短期居住権」について解説していきますヨ
「配偶者短期居住権」は被相続人の所有していた居住建物に相続開始時に無償で住んでいた配偶者が一定期間、その家の居住部分を無償で使用できる権利です。
配偶者短期居住権は相続開始時に発生するため配偶者居住権と違い遺産分割や遺言、家庭裁判所の審判によって権利を取得する必要はありません。
配偶者短期居住権の存続期間
配偶者短期居住権の存続期間には「建物が遺産分割の対象となる場合」と「建物が遺産分割の対象とならない場合」の2パターンあります。
建物が遺産分割の対象となる場合
建物が遺産分割の対象となる場合は遺産分割により居住建物を取得する人が決まった日または相続開始の時から6か月を経過する日のいずれか遅い方です。
例)4月1日に被相続人が亡くなった場合10月1日で相続開始から6カ月経過します。
それをふまえて遺産分割協議により建物を取得する人が決まった日が10月1日より前ならば配偶者短期居住権の期限は10月1日となります。
10月1日よりも後ならばその日が期限となります。
建物が遺産分割の対象とならない場合
建物が遺産分割の対象とならない場合は居住建物を取得した者が配偶者短期居住権の消滅を申し入れた日から6カ月までとなります。
ただし、期限前でも権利が消滅する場合があります。
(1)配偶者が死亡したとき
(2)配偶者居住権を取得したとき
(3)配偶者が善管注意義務に違反した場合など居住建物の取得者が配偶者に配偶者短期居住権の消滅の意思表示をしたとき
配偶者居住権(長期)との違い
- 相続開始に自然に権利が発生する。
- 登記することができない。
第三者が居住建物の所有権を取得した場合、配偶者はその第三者に対抗することができません。そのため立ち退きを求められた場合従わなければならない可能性が高いです。 - 居住部分にしか権利が及ばない。
被相続人の生前に配偶者が建物の一部しか使用していない場合その後、配偶者短期居住権を取得しても建物の全部を使用することはできません。
無償で使用していた部分にしか成立しません。

まとめ
今回は、2020年に施行された配偶者居住権について解説しました。家庭環境はそれぞれ異なります。
ほんとうに必要であるのかをご家族で十分に検討してから取得しましょう。
住み慣れた場所に長く居ることができるっていいなぁ・・