相続人同士で争いが起こる要因の1つは亡くなった方の財産が「どのくらいあるのか」また「どこにあるのか」がわからない場合です。
このような場合、相続人の間で「本当は誰かが財産を隠してるのでは」と疑いの心が生まれ遺産分割協議がスムーズに進まない可能性があります。
スムーズに進めるにはどうすればいいんだろう?
実は、このような事態を避けるための対処法があります。
それは生前に財産目録を作成することです。
財産目録を作成しておくことにより財産の全容がはっきりとし、相続人間の無用なトラブルを避けることができます。
トラブルを生まないためにも財産目録の作成をおススメします!
今回は、生前に財産目録を作成するメリットや財産目録の作成方法などを分かりやすくご紹介します。
財産目録とは
そもそも財産目録とは、家、預貯金、自動車など所有する財産を一覧表にしたものです。
この財産目録には、プラスの財産だけではなく、マイナスの財産についても一覧にします。
財産目録は、いつ、だれが作る?
相続財産目録は、作成義務がなく遺言者本人が作成してもよいですし、遺言者本人以外の人が作成することもできます。
ただし、遺言書で指名を受けた場合や家庭裁判所で人選された場合などで遺言執行者に就任した人は、相続財産目録を作成しなければなりません。
民法1011条1項
遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して、相続人に対して交付しなければならない。
このように、遺言者本人や相続人らに財産目録の作成義務はありません。
しかし、亡くなった後に相続人が遺産を調査し、財産目録を作成するのは手間がかかり大変です。
自分の財産のことは自分自身が一番把握しているでしょうから、生前に財産目録を作成し、相続人の負担を減らすようにしましょう。

財産目録を生前に作成するメリット
財産目録を作成するメリットには、次のようなものがあります。

それでは詳しく見ていきましょう。
遺言内容を検討できる
財産目録を作成することにより、ご自身の財産を把握することができます。
これにより、財産目録を見ながら誰に、どの財産を与えるか検討することができます。
遺産分割に活用できる
相続財産全体の内容が分かるため、相続人間の話し合いがスムーズに進み、結果として遺産分割協議が円満にまとまりやすくなります。
相続を承認するか放棄するかの判断材料にできる
財産目録により、プラスの財産がマイナスの財産より多い場合は承認を、プラスの財産よりマイナスの財産が多い場合には相続放棄を、といった選択ができます。
そのため財産目録が重要な判断材料になります。
相続税の申告を容易にする
財産目録により、課税対象額を算定できるため相続税を申告する必要があるかどうか判断することができます。
また申告が必要となった場合、相続財産の一覧表を作成する必要があるのですが、きちんとした相続財産目録を作成しておけば、申告書の様式に相続財産目録をもとに書き写すだけで済みます。
そのため相続税申告書作成の手間が大幅に軽減できます。
財産目録の対象となる財産
つぎに、財産目録の対象となる主な財産と財産ごとの記載例をご紹介します。一般的な記載方法ですので必ずしもこれに従う必要はありません。参考までにご覧ください。
不動産
土地、家、アパートやマンションなどの不動産が対象となります。
記載する際は、不動産の登記簿で確認しながら記載するとスムーズに進みます。評価額はご自身での計算が難しければ、固定資産税の課税明細に記載されている固定資産税評価額を入力しておきましょう。

預貯金
金融機関名、支店名、普通預金や定期預金など口座の種別、口座番号、預金残高を記載します。使かわずに忘れている口座がないか確認しましょう。

動産
車や貴金属、骨とう品など一定の価値を有する者は対象となります。

有価証券
株式、手形、ゴルフ会員権などが対象となります。

保険
死亡保険金の給付がある場合は、相続税にも関連するので漏れのないよう注意しましょう。

債務
住宅ローン、自動車ローン、クレジットカードなどに債務が存在するものは対象となります。

財産目録の作成方法
前述のとおり、遺言者本人や相続人らに財産目録の作成義務はなく、書式も自由です。
ただし自筆証書遺言に添付する財産目録を作成する場合には注意する点があります。
以下の条文をご覧ください。
民法968条2項(自筆証書遺言)
自筆証書にこれと一体のものとして相続財産の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。
この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
自筆証書遺言は、全文を遺言者本人が書かなければなりません。ただし添付する財産目録については自書を要しないため、パソコン等で作成できます。
この場合、遺言者はその財産目録に署名をし、印を押さなければなりません。(自書で財産目録を作成した場合は不要)
財産目録が数枚ある場合は、そのすべてに署名押印を要します。また紙の表と裏の両方に記載がある場合は、表と裏の両方に署名押印をします。
遺言書に財産目録を添付する
遺言書には、しばしば「不動産をAに相続する。」とか「車をBに遺贈させる。」といった記載がされます。遺言者が多数の財産について相続等をしようとする場合には、例えば本文に「別紙財産目録1記載の不動産をAに相続する。」とか「別紙財産目録2記載の預貯金をBに相続させる。」と記載して、別紙として財産目録1及び2を添付するのが簡単で便利です。


このように、相続等の目的となる財産が多数に及ぶ場合には、財産目録が作成されることになると考えられます。
自筆証書遺言に財産目録を添付する方法
自筆証書遺言に財産目録を添付する方法に特別な定めはありません。
しかし、遺言書の一体性を明らかにする観点から、遺言書と財産目録とをホッチキス等でとじたり、契印したりすることが望ましいものであると考えられます。
財産目録の作成例
財産目録の作成例です。書式は自由ですので、以下の財産目録を参考にして作成していただいても、ご自身で一から作成しても構いません。
一枚の表形式にした財産目録

上記のような一枚の表形式にぜずとも、不動産の登記事項証明書や預金通帳のコピーを財産目録として添付するこもできます。この場合は一枚ごとに署名押印をしてください。
登記事項証明書

預金通帳のコピー

自書によらない財産目録の訂正方法
自書によらない財産目録の中の記載を訂正する場合であっても、自書による部分の訂正と同様に、遺言者が変更の場所を指示して、これを変更した旨を付記してこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じないこととされています。


まとめ
以上、財産目録について紹介しました。
財産目録を生前に作成しておくことで

といった、さまざまなメリットがあります。
元気なうちに自分の財産目録を作成しておくことが相続人の幸せにつながるのではないでしょうか。